2014年1月29日水曜日

中国人留学生が実感する「変わりゆく故郷」=建設ラッシュとマナーの向上

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レコードチャイナ 配信日時:2014年1月29日 14時8分
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中国人留学生が実感する「変わりゆく故郷」
=建設ラッシュとマナーの向上


●中国の発展は早いとよく言われていますが、そのスピード感を実感するには、やはり実際に何度も行って、目の前の様子を比べてみるのがいいと思います。写真は筆者撮影。

 中国の発展は早いとよく言われていますが、そのスピード感を実感するには、やはり実際に何度も行って、目の前の様子を比べてみるのがいいと思います。
 国から出て海外で留学・就労する中国人たちも、よく「毎回帰ると変化にびっくりする」と言っています。筆者もその一人です。

 去年の夏に1回帰国しましたが、今回(2014年1月末)も春節(旧正月)を過ごすために帰ってきました。
 4カ月間は決して長い時間ではありません。
 普通に考えれば季節が変わるだけです。
 しかし現在の中国では、必ずしもそれだけではありません。
 特に筆者の出身地(湖南省)のような、沿岸部都市の発展を追いかけていることで、経済成長が進んでいる地方の都市では、4カ月間でも変化が十分に感じられるのです。
 では、いったいどんな変化が起こるのでしょうか。

■帰るたび、前より「高く」なる

 一番はっきり見える発展はやはり建設にあります。
 都市のスカイラインは、前回来たときよりも高くなるのです。
 数カ月前に建設中だったビルは数カ月後に完成して、そしてまた何もないところで新しいビルの建設が始まったり、背が低かったビルが建替えられたりすることが中国の都市の日常。

 利用できる空地は、特に郊外にたくさんあるので「郊外」を市街地にして、しかもできたものはほとんどが超高層。
 都市の中心部でも、中国に私有地という概念が厳密に言えば存在していないということもあり、老朽化したものを潰して新しいものに建て替えることが簡単にできるので、昔の団地はどんどん分譲マンションに変わっています。
 ビルが高くなったというのは、地価の高騰にも関わっているのです。
 「土地が少ないことから」というより、如何に一定の面積の土地にできるだけ多くの人が入居できる住宅を建設するかという考え方です。

■帰るたび、前より「早く」なる

 建物だけではなく、道路の建設も急進しているようです。
 4カ月間で、筆者の実家の周囲だけでも2本の新しい道路が開通されました。
 そしてたまたまかもしれませんが、近くにある江戸川と同じくらいの規模の川にも新しい橋が開通しました。

 市内では、旧道を広げる工事も進んでいます。
 前述の老朽化した住宅地が取り壊された後に新しいビルとともに新しい道路が整備されるパターンもあります。
 道路交通インフラの整備もよく印象に残っています。
 市内ではLEDの照明灯や新しく導入された取り締まりシステム、郊外では高速道路のETCレーン(ちょうど現在、業者が銀行と連携し、無料のETC機器を配布したりして普及を図っているようです)など、以前にはなかったものが次々と登場しています。

 そして何よりも地下鉄の建設。試運転を開始した路線もあり、図面上のものだった数多くの新線の駅の工事もあちらこちらで行われています。
 空港と高速鉄道駅を結ぶリニア線の企画も発表されました。

■帰るたび、前より「混んで」いる

 道路の建設が急がれる背後には、自動車数が急増している事実もあります。こ
 れは、4カ月間の変化で一番明らかに見えることです。
 まるで誰でもが車持ちになったみたいに自家用車が普及しています。

 都市部の人口密度は住宅の高層マンション化により非常に高くなり、1世帯当たりの保有自動車数がそんなに多くなくても、混み合うからです。
 敷地内の駐車場に停められない車が道路の脇に停まっていたりして、本来の想定では十分な広さの車道が機能していないために車が多くなったと特に感じさせられてしまいます。
 急ピッチで進められる道路建設でも、むしろまだまだ足りないのではと思ってしまいます。

 一方、交通マナーは相変わらずよくないです。
 中国のドライバーは、運転マナーの意識が薄いということもありますが、免許取得ブームもあって初心者マークをしている車による混雑もかなりあります。経済急成長の今だけ見られる光景です。

■帰るたび、前より「きれい」になる

 交通安全意識や運転マナー不足の市民ですが、全体的にマナーが少しずつよくなっていることは、短いスパンだけの観察でも分かります。
 目立っていたポイ捨てなどの行為はあまり見られなくなりました。
 地方都市とはいえ、それなりの規模があり(人口600万人レベル)、それなりの雇用とビジネスチャンスもあるので、さらに遠くの地方からやってくる人がたくさんいて、毎年増加しています。
 農閑期に農村部から都市部に来て肉体労働で稼ぐ人たちは、教育格差などの原因でマナー意識の問題を抱えているイメージがありましたが、最近はかなり改善しているようです。

 一方、都市のインフラ整備もかなり進んできた気がします。
 これもあちらこちらで起こっている変化です。
 インフラ以外にも、夜のイルミネーションなど都市の景観を華やかにするところも増えました。

■帰るたび、前より「汚く」なる

 日本でも話題となっている中国の大気汚染。
 これは本当にひどくて、しかもこの問題は月単位で大きくなりつつあるようです。
 前回帰国した時には、まだ青空が見えていたのですが、今回は天気が「晴れ」と報じられながらも灰色の土曇りで1km先のビル群でも見えにくくなってしまっている状態です。
 南方にあるこの都市は北京周辺とは違って汚染のひどい代表都市のひとつではなかったのですが、今は同じような状況になってしまっています。
 大気汚染は全国範囲で広がっており、どこの人でも苦しんでいるようです。
 日も見えなくてほこりだらけの町はまるで白黒の世界になったようで、見た目だけでも人の気持ちを悪くさせるものです。

■帰るたび、前より「高く」なる―2

 都市にあるビルとともに高くなったものは、もう一つあります。
 それは物価です。
 為替市場で人民元の価値が上がっている一方で、国民の購買力が強くなったとは言えません。

 筆者は帰国するたびに何らかのものが値上がりしたと必ず気づきます。
 食事も毎回高くなり(外食産業の発展による部分もありますが)、中国だからこそ手に入れられる安い品物もだんだんなくなり、むしろ日本の100円ショップで買えばいいと感じるようになりました(以前は小家電などのものは、帰国して買って日本に持ってきたほうが得でした)。
 しかし、どちらかというとやっぱり物価の上昇もよいことなのかもしれません。
 生活水準が高くなったことが反映されているからです。
 劣等財の需要がどんどんなくなり、上級財に代わられたというのが大きな原因です。

 お店がオシャレでなければ顧客は行かない、サービス業者は常に新しいコンセプトを考えてイノベーション的なサービスを提供できなければ消費者にアピールすることができない、という
 「お金は問題ではないから喜ばせるものをください」
という社会になりました。
 今回の帰省で友人たちと会ったお店のほとんどは、東京においても「サービスがよくてオシャレ」と言えるくらいにまともな店で、しかもこれは今の中国地方都市において「ごく普通のレベル」となっていました。
 中国の第三次産業もここまでやってきたのだなぁと思いました。

 中国で起きている変化は、海外の人や中国だけにいる人も簡単に気づけるものでありながら、その実態や程度の把握はなかなかできないと思います。
 しかし国内外を行き来する人間にこそ、いったいどんなものが変わって、そしてそれは世界と比べた時にどのような意味があるかを理解しやすいでしょう。
 日本の方も本当の中国を知りたければ、メディアの情報よりも実際に足を運んで中国に行って見た方が、リアルな中国が分かると思います。
 私自身、日本に来る前の「日本のイメージ」と実際に生活する「日本」とが大きく違っていたこともあり、中国の発展のイメージも日本に来て、そしてまた帰ってから分かったこともあるからです。

◆筆者プロフィール:ボクヨウ
1991年中国湖南省生まれ、2011年に留学生として来日。2012年から日本での車旅行を始め、翌年に日本列島走破という目標を達成。現在でも様々な旅を続けている。






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